三十三歳のとき、雑誌の体験取材で人間ドックを受けました。フリーランスでかつ元気印だったため、健康診断に行くこともなく三十代を迎えて数年たっていました。悩みと言えば太りやすく痩せにくくなったことぐらいで、特に健康不安はなかったので、安心して人間ドックも受けられたのです。なので、産婦人科のおじいちゃん先生から、
「子宮筋腫がたくさんありますね。子供が欲しいなら、早くなさい」
と言われたときは、ショックでした。当時、子宮筋腫についてはほとんど知識がなく、良性腫瘍であること以外、なにも分からなかったのです。まだ作家として本を数冊出したばかりだったし、結婚して子供を産む気もさらさらなく、自己実現の最中でした。でもそこから、私の自然治癒、スピリチュアル行脚は始ったのです。
何しろ、病院嫌いで手術恐怖症でしたから、切らないで治るならなんでもする、という意気込みだったのです。鍼灸治療から始まって、マクロビオティック、クレニオセイクラルワーク(頭蓋仙骨治療)、レイキ療法、ヨガ、ベリーダンス、ピラティス、ロルフィング、アーユルヴェーダ・・・。最初は治療家に委ねて施術してもらうだけの一患者でしたが、治療家のアドバイスで食事に気を付けたり、イヤイヤ体を動かしているうちに、その楽しさに知り健康オタクと化して行きました。しかし三十五の時、結婚して妊娠するも、すぐに流産してしまいました。
ショックでどどーんと落ち込み、そこからまた、「もっと健康オタク」の生活が始まったのです。早寝早起きヨガ、オーガニックのマクロビ生活にも磨きがかかり、健康のルーツを探ると究極スピリチュアルに行きつくので、精神世界の本を読み、リーディングやヒーリング、ホメオパシーやフラワーエッセンス、ついにはヒプノセラピー(退行睡眠療法)十回セッションまで受けました。
夫婦の旅は世界のパワースポット巡りになり、現地で色々なセミナーを受けたり、様々なヒーリングや自然療法を受けるのが楽しみに・・・。そうこうしているうちに、もう健康で生きてるだけでも幸せだ! という境地に至ってしまったのです。それぐらい、体調も気分も良くなっていました。
そんな頃、旅行先のマウイ島でぼんやり星空を眺めていると、「うちには猫もいるし、夫婦だけでも幸せだよね」と、どちらからともなく言い合いました。つまり、子供が欲しくて頑張って来たのに、どっちでも良くなってしまったのです! その半年後に、思いがけずできた子供が今十二歳。今年の秋で十三歳になります。欲しがってるうちはできず、諦めた途端に妊娠する、というのは、不妊治療経験者からよく聞く話です。
子宮筋腫の自然治癒と、自然妊娠を目指してスピリチュアル行脚をした三十代。三十九で妊娠したのをきっかけに、つわりで自然食品も食べられなくなり、いきなり食生活から「俗」に戻りました(笑)。しかし過去何年も「もっと健康」になることに血道をあげていたためか、今時珍しいぐらいの健康優良児をわずか四時間半の安産で自然分娩したのです。ある意味、成果は出た、と言えるのではないでしょうか。
しかしこれで終わりではなく、四十代はまた、子育ての最中に「プレ更年期」を体験するという、新しい「旅」が始まるのです。明日はこのお話を。